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姫様にょっき |
2005年9月5日 |
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迷子 |
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2日目の夜、秋葉原に彼女の携帯電話を買いに行った。はぐれようが離れていようが、とにかく連絡手段さえ互いにあれば何とかなると思うからだ。1日目・2日目は彼女を右も左もわからない日本で飢え死にさせないことがまず先決だったが、携帯電話はその次に、ほかの何より重要である。
料金等の理由で私が勧めた会社のは、形がどれも彼女の気に入らず見向きもされない。ラオックスコンピュータ館で気に入った形の電話機が見つかった。Vodafone。機能や料金などはどうでもいいらしい。とにかく見た目らしい。まあ実際、日本の電話料金なんてlogとればどこも同じだし。
私の月収から生活費を引き、その残りを半分ずつ分け合う、という考えを私は徐々に彼女に理解させつつある。そうすれば、彼女自身の財産ができて心にゆとりができるだろうと思うからだ。彼女がほしいものは、その彼女の財産のなかから支払えばよい。だから携帯電話の料金も、彼女の財産のなかから支払うように言った。彼女はそれを気に入らない。しばらくそのやりとりを店頭でしていたら 「じゃ買わなくていいよっ」 と言って突然彼女は店の外へ歩き出してしまった。
秋葉原の人ごみの中で私はやがて彼女を見失ってしまった。駅のほうへ行ってみてもいない。改札の中にもいない。
これは…
かなりヤバいことですよ…?
おうちをきいてもわからない なまえをきいてもわからない
こちらから彼女への連絡…とりようがない。
彼女からこちらへの連絡…そのために携帯を買おうとしていた矢先の出来事。
彼女が誰か通行人とか警官にたすけを求めた場合…日本語ができない。
なんとか意思疎通できたとして…うちの住所を知らない。へたしたら最寄り駅名もまだ覚えてない。
電車に乗ってなんとか帰宅できる可能性…秋葉原の改札入ったあと、正しいホームにたどり着ける可能性が皆無。万一正しい電車に乗れたとしても、正しい駅で降りられる可能性も希薄。
迷子札の類を持たせておかなかったことを激しく後悔した。
もう二度と会えないのだろうかと思った。胸の中の重いおもりがどんどん大きくなっていって私の体を勝手につき動かす。頭の中が熱くなっていく。だんだん気がおかしくなってきた。
さがしまわって2時間後、電気街口のサトームセンの閉じたシャッターの前でじっと立っている彼女を見たとき、私は彼女にかけよって 「ここにいたのか!」 といった。彼女は小さくうなずいた。私は瞑目して大きく息を吐き、 「家に帰ろう」 と告げた。
彼女が待っていたそこは、さっき私たちが改札を出たところだった。まわりの店がどんどんシャッターを下ろしていくなか、さぞかし心細かっただろう。来てわずか2日目の日本で。だれも知らずどこへも行けずだれともなにも話せずに。1歩足を踏み出したとたん、彼女ははげしく泣き出した。即座に私はその背中をやや乱暴に引き寄せて抱いた。
2分間ぐらいも抱き合っていただろうか。二度と目を離さないようにしながら電車で最寄り駅まで帰った。 「もう僕はきみを二度と一人で行かせない」 と彼女に決然と宣言すると、彼女はまた泣き出した。
遅くなってしまった晩御飯を魚民で食べさせながら、彼女に言った。 「別会計のことは一切忘れよう。これからはきみがほしいものは全部僕がお金を払うかまたはきみに買わないと言う」 彼女は、その形に落ち着いて満足らしかった。飲み物が来た。また泣き出した。料理が来た。また泣き出した。隣りの席ではどこかの会社の上司と部下がほかの社員の悪口を声高に話し、前の席ではどこかの大学の仲間たちがだれだか区会議員を呼び寄せようと 「センセイ…はやくきて」 などと下品なメールを送っては笑いころげている。
あとできいたら、はぐれてすぐ、彼女は公衆電話から私のPHSに電話しようとしたそうだ。100円玉を2枚入れて。公衆電話の使い方なんて教えてなかったのに。手のひらには私の電話番号が。これで何とかなったはずだったのだ。でもつながらなかったとのこと。なぜだろう。
後日、同じ店を再度訪れてそのVodafone
V501SHを買った。そして私の電話番号を送ったら 「えっ、頭に0がつくの」 と彼女がいう。それで電話がつながらなかった理由がわかった。彼女がカンボジアにいたころ、日本の私の番号を彼女に 「001-81-70-XXXX-XXXX」 と教えてあった。だから彼女は秋葉原の公衆電話で 「70-XXXX-XXXX」 と押していたのだった。
「僕も初めて外国へ行ったときは同じ間違いをしたよ」 と彼女にウソをついた。 |
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